ミュンヘン

いま、ミュンヘンにいます。うそです。
昨日、映画のなかで、ミュンヘンにいました。

スピルバーグの、ミュンヘン。

非常に厳かなテーマソングに乗って、映画は始まり。

最初は、シンドラーのリストから続く、ユダヤ人のための、言葉は悪いが
プロパガンダ映画かと思ってた。
パレスチナのテロリストは徹底して非道な、血も涙も感情もないモノとして
描かれていたから。

途中から、徐々に感じ方は変わってた。あ、スピルバーグは彼自身がユダヤで
あることもあり、一往はイスラエルの側から物語を編んでいるが、でもけっして
彼の国の肩を全面的に持ってるわけでは、まったくない。

この映画のテーマを一言で言えば、ありていな言い方になるけど、国家というモノの
非情さとか、国家という巨大組織に翻弄される一個人の運命、とか、そんな感じに
なると思うけど、もしかしたらスピルバーグの意図したものは、もっと大きなもの、
つまり、人類の業、みたいなものを、描こうとしたんじゃないかと思ってる。
どうして人類は憎しみの連鎖を断ち切ることができないのか、どうして人間はこんなに、
ここまで愚かなのか。

じつは、最後の10分だけ、次の日に、見た。主人公の結末が、どう悲劇的に着地
するか、スピルバーグのお手並み拝見てな、半分意地の悪い感じで。
けど、さすがスピルバーグ、いい意味で、その後を自由に想像させるような、そんな
描き方で静かに幕を下ろし。
ニューヨークのさびれた海っぺりを、いい感じの舞台装置として利用してて。

少々ミーハー的な見方だけど、この映画、豪華なロードムービーとしても、見ることが
できる。テロリストを追って、欧州各地を転戦し続けるから。そして毎回のように展開
される、場違いなほど豪華な晩餐。

こんなに重い映画が、近所のスーパーのGEO BOXの隅っこに眠ってて5日間たった
100円で借りられるって、なんだかグローバリズムの資本主義、いいんだか悪いんだか
わかんねえな。

いや、でも、たぶん僕は、シンドラーのリストよりも、ミュンヘンのほうが、好きかも。
評価がむずかしい現代を描いてるという点で。

ミュンヘンの悲劇が1972年。それから39年がたってるけど、イスラエルとパレスチナは
少しは歩み寄ったのかな。そして人類は少しは賢くなったのでしょうか。