映画「パリ20区、僕たちのクラス」

パリ20区、僕たちのクラス パリ20区、僕たちのクラス (2008)

【監督】ローラン・カンテ
【出演】フランソワ・ベゴドー


★★★★ [80点]「見て損はない、佳作。」

パリの20区って、まったく知らないけど、中心部ではなく、どちらかというと周辺部に近いところなのだと思う。東京でいうと、足立区とか荒川区といったイメージかな。

移民の子どもたちがものすごく多い学校で。アフリカ系、アラブ系、そしてアジア系。

担任でもある国語(フランス語)担当の熱血教師が、彼らと激論を交わしながらもなんとか教室運営に奮闘していくさまをドキュメンタリータッチで描いている。

しかし、なんというか、移民の子どもたちも弁が立つというか、まあ屁理屈ばっかりなんだけど、自分たちの権利を思いっきり主張することに余念がなく。このあたりは日本の中学生とは、まったく違うよね。文化の違いというのを、まざまざと見せつけられた。教師たちの会議も、基本的には意見をガッツリとぶつけ合う。校長が言うから、納得できなくても従う、みたいなあり方は、少なくともここでは、一般的ではないみたいだな。

映画は淡々と進む。とくべつドラマチックな出来事が次々に起こるようなこともない。このへんは、同じような題材を扱った「フリーダムライターズ」に比べると地味というか、サービス精神が足りてないというか、まあドキュメンタリータッチなのです。最初、ホントにドキュメンタリーなんじゃないかと思った。ちょっと乱暴な感じの映像の撮り方とか。

ときどき、生徒たちが中庭でスポーツに興じたり、下校していく様子が描かれる。校舎の3階か4階あたりから、斜めに見下ろしたアングルで。それが何度も続く。ああ、これってわざとだよなあ、と思ってみてたら、案の定、最後のほう、もう終わりが近いというシーンでは、教師たちも生徒たちに混じって、サッカーを楽しんでる。このシーンは、彼らのなかにカメラは入っていき、近い場所から彼らの動きを追う。それまで対立していた教師と生徒たちが、一応の和解をみせたとでもいうように。

ものすごい感動巨編とかじゃないと思うけど、見終わって心がしんとするいい映画、佳作だと思います。

見て損はないかな。僕はそう思います。

とくに、教育に携わる人にとっては。

Posted by oguray on 2011/05/20 with ぴあ映画生活