電車の、隣の席の男が
さっきまでコミックを読んでて。たまにくくくって笑う。彼は標準的な体格の1.4倍くらいの体積を持っているので、その振動はただちにこちらに伝わり。
コミックをひとしきり読んだ後、彼はソニー製のポータブルゲーム機をカバンから取り出し、始めた。シューティングゲーム。ものすごく熱中している。
昔、ある男に、小倉くんは恋愛ゲームとかをやってみたらいいんじゃないの、っていわれたことがあった。
その男が小倉をどのように下に見ているのか、手に取るように分かり、僕は静かに微笑んだ。
心のなかで、僕はゲームなんかやりませんよ、とつぶやきながら。