最近すごく学んだこと。

カメラマンとして、恥を晒すことになるけど、57歳と半年が過ぎて、最近ようやく学んだことを書く。

ようやく“気づいた”といってもいいかもしれない。前から、うすうす感じていたけど、苦手なので、なるべく見ないふりをしていたこと、といってもいいかもしれない。

最初のきっかけは、八景島シーパラダイスでの出来事。千葉市の某県立高校の校外学習の撮影で。
4月の下旬だったか。あたしがその日に書いたツイートが残っているので、そのまま載せる。

twitterには書かなかったけど、ちょいとキツく言ったら、その添乗員の男が、注意されちゃった、という困ったような表情でニヤニヤしてたので、つい、ニヤニヤしてるんじゃねえよ、とドヤしつけてしまった。ごめんなさい。最初に8クラスの集合写真を撮って、追加で先生の集合写真も撮ってたら、生徒さんたちが広い八景島シーパラダイスのなかに散って行ってしまうので、1秒でも早く、追いかけたい。追いかけて写真を撮りたい、と思うあまり、添乗員の男性にキツく当たってしまった。本当にごめんなさい。

で、それが自宅の近所の某写真屋さんにフィードバックされ、ただでさえ仕事を干されぎみなのに、さらに干される結果に。笑

そのことを、兄貴とも慕っている社員カメラマンのOさんに撮影現場で話すと、これから挽回するしかないですよ、過ぎたことは取り戻せないので、と励ましてくださり。

そのことと前後して、いろんな撮影で、ああ、あたしって、いわゆる“サービス精神”が足りないのよね、と思うことがあり。

そうだ、このエピソードもけっこう感動的で。これから書くエピソードね。

最近お仕事をいただくようになった写真屋さんの仕事で、葛飾区の幼稚園の徒歩遠足に行った。
5月の中頃だったか。年長と年中ひとクラスずつが行くんだけど、水元公園でバラバラに活動するのでカメラマンはふたり。もうひとりの、間違いなく僕よりはベテランのカメラマンから、前日にショートメッセージが入った。

で、園の近くのコインパーキングにクルマを止め、時間を見計らって園の正門に向かうと、あたしよりも二回りくらい大きなLoweproのリュック型カメラバッグを背負った屈強そうな男性が。あ、間違いなくこの人が今日の相棒のカメラマンだ、と思って、●●さんですか、と声をかけた。

その人が振り向いた瞬間、僕は声を上げてた。

あ、どっかでご一緒したことありますね

で、そのあと、どこで一緒になったか、ふたりでいろいろ探り合うのが通常の流れで。

でも僕の脳内をいくらgrep(全文検索)しても、その人の顔も名前も出てこない。

もしかしたら、そんな気がする、というだけなのかもしれない。そういうこと、けっこうあるので。

けど彼が、即座にこういう。10年以上前、たぶん2012年、さいたまの●●幼稚園の運動会ですよね。

全然、記憶にない。彼が続ける。その日は雨で、ギリギリまで先生が会場たる小学校校庭の水たまりの水を吸い出したり、いろいろ努力されてたんだけど、大雨で、結局は中止、延期になったんですよね。

いや、ぜんぜん、まったく覚えてない。

なぜ彼が、13年も前の雨で中止になったさいたまの幼稚園の運動会のことを覚えてたかというと、そのあと、その幼稚園に、何度か撮影で伺ったんだって。その記憶と結びついて、忘れがたいものになっているのかな。

西新宿の写真屋さんのサイトを開き、自分の過去の撮影履歴をみたら、ありましたよ。●●幼稚園の運動会。そして無事に行事が開催され、撮影と納品が済んだのであれば記載がある欄が、すべて空欄で。

僕にとって、2回目の撮影だったんですよ、と彼が言う。

それまでは写真を趣味でやってた。警備員の仕事を続けながら。でもあるとき、一念発起して、カメラマンとして食っていくことを決意。それから10年余が過ぎた。

どうも写真屋さんの設定したカメラマンの集合時間と撮影開始時間がけっこう離れていて、ふたりで手持ち無沙汰で世間話をする時間があり。

そこで彼のカメラマンとしての大活躍を聞かせてもらった。

話を聞くうちに、どこまでいってもフリーカメラマンって文字通り“サービス業”なんだなあ、ということを身に染みて知った。どこまでもあたしに欠けているのは、この、自分の周りの人たちに対するサービス精神なんだな、と。

さだまさしの名曲に「もうひとつの恋愛症候群」という歌がある。全編めちゃめちゃ笑えるんだけど、そのなかで血液型に関するくだりが出てくる。ちなみに僕はB型。

気が向いたら異常に優しい
けれどもめったに気が向かず
わがまま でも恨まれないB型

すごくないですか。こんなに端的にB型の気質について表現してる言説を、僕は見たことがない。

さだまさしの「恋愛症候群」、つまり「もうひとつの…」のモト歌では、こうなってる

他人のことなど考えられずに
大切な花畑平気で踏み荒らして
ヒンシュクをかうB型

ね、「もうひとつの…」のほうが深いでしょ。

もうひとつ、さだまさしの作った名曲「不良少女白書」。榊原まさとしが歌ってヒットした…
これには、こうある。

自分に正直に生きるなら
風に逆らって生きるのなら
居直ることが勇気だなんて
自分に甘えるのは およし

深くないですか。何十年も前から、あ、これ自分のことを言われてるなあ、というのはずっと気づいていたのですが、だけど、自分に甘えるの、を、よしてなかった、気がする。

さっきの、「もうひとつの…」を再度引用するけど、

気が向いたら異常に優しい
けれどもめったに気が向かず
わがまま でも恨まれないB型

気が向いたら異常に優しい、これまさにあたし。

撮影でも、気が向いたら、いくらでも撮ってる。子どもたちとも、先生に怒られそうなくらいにコミュニケーションを取ってる。ちょっと過剰なくらいに。それを、いまが100だとしたら、15%くらい抑えてみようかなと思った。つまり100だったヤツを85くらいにする。

その分のエナジーを、“サービス精神”つまり、こうやったら相手は喜ぶかもなあ、という方向に割り振る。そうすることで、トータルのバランスが、すごくよくなる気がする。

別の言い方をすると、自分がやりたいこと、よりも、みんなに望まれてること、というべきか。

むかし、デジタルカメラの雑誌の編集をやってた頃、お世話になったカメラマンがいて。

その方は、親しいモデルさんとかを連れて編集部に現れるんだけど、しばらく一緒に撮影してると、見えてくるものがあるのね。

ああ、この人は、読者のためにいい写真を撮る、というより、自分がよがりたいという思いのほうが強い人なんだな、と。

そこまで読者には伝わらないかもしれないけどね。すぐ近くでみてる編集者にはイタいほど伝わってきてしまうわけで。

その人に、こんなことを言われたことがある。その人から、僕は当時、オグさんと呼ばれていた。

オグさん、僕の写真、好きじゃないでしょ。

え、なんでわかるんだろう、と思ったんだけどね。まあ人間、伝わるよね。笑

やや話は飛ぶかもしれないけど、ずっと昔、はるか昔、巨匠・小沢忠恭先生の世田谷のご自宅に伺ったときのこと、なぜか娘さんもまじえてお食事をごちそうになったんだけど、そのときに小沢先生にこう言われた。

オグラくんは、誤解されやすいんだよねえ。

そのときはおっしゃってる意味がまったく分からなかった。

いまも正確には分からないけど。でも、じぶんではこういうつもり、というのが、相手とか周りには、ちゃんとしっかり伝わってない、ということだよね。

まあ、なんとなく、わからないでもないかな。

わからないなりに、自分はヒトサマから誤解されやすいんだ、と心得ておくことは、大事なのかな、と。

えっと、そんなことを悶々と考えながら、この3週間ほどで、長野県上田市に2泊3日、長野県上田市に2泊3日(2回目)、福島県に2泊3日、そして千葉の内房・外房に1泊2日、の撮影に出かけ。

そのことを意識しながら撮影に臨んでみました。

それなりに、うまくいった実感がある。まあ、まだまだ失敗はあるんだけどね。

昨日は鴨川シーワールドで、以前たまに撮影で一緒になってた若いカメラマンと、ばったり会ったんだけど、そのことをtwitterで書いたら、なぜか彼が僕のツイートを見て、反論?を寄せてくれた。

なんか悪いことをしたなあ、と少しだけ思ったり。

自分に引きつけて、書くと、人間誰しも欠点とか失言とか、あるよね。

それを必要以上にあげつらって、お互いに批判し合ってても、あんまり建設的だとは思えない。

受け取る部分は受け取りつつ、流す箇所は適度に流しつつ、前に進んでいくしかない。

そんなことをつらつらと考える、57歳と半年の土曜日の昼下がりのこと。

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