殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件

殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件 [単行本]

今日、Amazonで買ったこの本を読み始めたけど、驚愕すべき内容。
こんなすごい事件記者がいたのかと感動に打ち震える。いや、本当に。

警察の捜査発表を鵜呑みにせず、矛盾を嗅ぎつけ、自分たちで膨大な資料を読みあさり、現場に数限りなく足を運び、新しい証人を見つけ出し、警察にもみ消された核心証言を蘇らせ、犯人とされた男性の無実を証明する。

すごすぎる。こんな事件記者がいたのか。

その一部始終を、当の本人が書いてるんだから、おもしろくないわけがない。いや、悲惨な連続殺人事件のルポルタージュを、おもしろい、といってはいけないことは重々承知している。が、ドキュメンタリー、読み物として超一級のおもしろさなのだ。そりゃあそうだよな、警察にことごとく揉み潰された真実を、著者を中心とした一報道機関の数人のチームが、次々に発掘していくんだもん。

これはおこがましいかもしれないけど、この本を読みながら感じたのは、最初のほうから感じてるんだけど、この清水さんのモチベーションというか、問題意識というか、性格なのかもしれないけど、自分と似てるな、と思った。誰がなんといっても、おかしいことはおかしい。許せないことは、たとえ自分の身がどうなっても、認めない。

清水さんのすごいところは、相手が巨大な岩盤のような警察組織であっても、小さな事実を丹念に積み重ねることによって、最後には、警察にその非を認めさせるところ。

本の中で、元死刑囚の方に語らせてるけど、むかしの犯罪捜査なんて、いまよりもっとずっと杜撰でいい加減で、無実の人が捕らえられ、犯人に仕立て上げられ、無念の死を遂げていった人がたくさんいる、と。

こないだも書いたけど、人が人を裁くということ。そのおそろしさ。矛盾。

悲惨で重大な事件を扱った本書ではあるが、おそらくは著者のサービス精神の賜物なのだろう。随所に散りばめられた良質なユーモアのおかげで、読者は何重にも満足感を味わえる。うまくいえないけど。悲惨で重大な事件だから、文章も無味乾燥として徹頭徹尾、怒りに打ち震えていたら、読むほうも疲れてしまう。悲惨で重大な事件だからこそ、相手が巨大な岩盤みたいな警察官僚組織だからこそ、長旅であるからこそ、ユーモアは絶対に必要。

そう、良質なシリアス映画を見せてもらってる気がする。

きっとこの清水さん、出身は関西なんだろうな。そうじゃなきゃ、これだけ深刻なテーマを扱った本書で、これだけ堂々とユーモアを連発できないと思う。これは才能というしかない。本当に素晴らしい。

いま2/5くらいかな。全体の。どうせ明日も集合時間よりもずっと早く撮影現場に着くだろうから、この本を持っていって、じっくりと読もう。

学生時分にこの本に出会ってしまい、事件記者を目指した若者は山ほどいるんだろうな。
けど、当たり前だけど、だれもが清水さんになれるわけではない。才能と、運と、実力と、人柄と。

著者が節々で膠着状態を突破する、その武器は、手紙。
さらっと、手紙ばかり書いてきた、みたいなことを書かれているが、きっと思いのびっしり詰まった、読んだ人を揺り動かさずにはおかない、誠実さのこもった手紙なんだろうな。

手紙のエピソードに象徴されるけど、人はやはり、誠実に生きなければいけない、とあらためて強く思う。

その場はうまく乗り切ったつもりであっても、インチキや嘘やでたらめを重ねていたら、その人の人生はどこかで必ず、破綻する。

人が人を裁くことには限界があっても、天の裁きは、逃げようがないから。
一点の矛盾もなく。

読み終えたら、また感想を書きます。

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