津波てんでんこ

昨日の夜、勝田台から帰ってきて、ものすごーくひさしぶりに仕事の負荷から完全に解放
された日だったので、急に思い立って、ずっと前に録画してたテレビ番組を見ることにした。
いきものがかりのライブと迷ったのだが、NHKの特集、「釜石の奇跡」を。

番組予告とかホームページの説明とかだと、もっとドキュメンタリー調の番組なのかと
思ってたら、スタジオのひな壇に芸能人が10人くらい並んで、あーだこーだとコメントを
はさむ、いわゆるバラエティ的な作りの番組だった。

僕が釜石の奇跡について知ったのは、釜石の奇跡の立役者(?)、片田教授のインタビュー
映像を見たから。片田教授の語り口に、この方はなんとクレバーなんだろう、そしてなんと
情熱的なのだろう。理想の学者というのは、この片田さんのような方をいうのだろう、と
感動しながら、そのインタビュー映像を繰り返し見た。僕は知ってる人は知ってると思うけど
感動すると平気で滂沱の涙を流すたちで。片田さんのインタビューでも、何度も見て、
何度も泣いた。

で、NHKの番組。実際の釜石の子どもたちや、彼らによって命を助けられた大人たちが
登場し、証言してるのは、ものすごく貴重。3・11当日の様子も、アニメでリアルに再現し。
これができるのは、さすがNHKと舌を巻いた。
ただ僕は片田さんのインタビューで概要は知ってたから、というのもあるのかもしれない
けどゲストの芸能人や子役と司会者との掛け合いは、妙に緩くて見ていて退屈すぎた。
ここまで娯楽調に落とし込まないと日本の視聴者は見てくれないのか、とも思った。

で、途中でもういいやと思って、何か月かぶりに、片田教授のインタビュー映像を
見返すことにした。DVDもどこかにあるはずだが、キチンと整理しておく習慣がないので
パソコンのなかにあるはずのDVDイメージをさがし。たぶんこれだろう、というのを見つけ
そっこー板に焼いて、見た。

で、やっぱり超感動。どうして片田教授が防災授業を釜石でやろうと思ったか。
23万人が亡くなったインド洋津波の被災地に足を運び、そこで悲惨な被害の状況を
まのあたりにして、このままでは日本でも同じことが起きてしまう、それは絶対に
避けなきゃいけない、と考え。

で、防災の講演とかをあちこちでするんだけど、そこに来る人たちというのは最初から
意識の高い方々で。どうにもこうにも広がりが足りない、と考えた片田教授は、
どこかに拠点を作ろうと決めた。で、あちこち連絡して、反応がよかった釜石を
その場所に決め。釜石というのは、昔から、何度も何度も津波の被害を受けてきた
土地で。

長くなりすぎるから省略するけど、ほんの15分くらいのインタビュー映像だけど、
本当に感動する、泣けるポイントが目白押しで。

いっぱいあるけど、最後のほう、片田教授が、震災後、釜石を訪れて。歩いてると
いろんな方にあいさつされ。生徒のお母さんに、聞いたんだって。

「お子さんは、逃げましたか」って。

そしたらそのお母さん、

「もちろん逃げましたよ。うちの子は逃げるなっていっても逃げる子ですから」
って。

片田教授は、その答えを聞いて、
「でかしたぞ」って。

子どもは真っ先に逃げることによって、そしてそれを前もって周りの大人たちに
知らしめておくことによって、子どものことを心配する、多くの大人たちの命を
救ったのだ、と。

あ、思い出したから書くけど、インタビューのなかで、片田教授のこういう考えが
何度も紹介され。

つまり、津波は自然現象で、自然というのは、ときとして、人間にはどうしようも
ないほど大きな振る舞いを見せることがある、って。僕ら人間はそれに対して、
いまいる場所で、最善を、ベストを尽くすことしか、できないではないか、と。
もしそれでも津波に飲み込まれてしまったら、それはそれで仕方がない。それは
ひとつの自然な死に方であると。

片田教授、いまの時代のことをよく分かっていらっしゃるから、こういうご自分の
お考えを訴えられるときは、必ず前置きとして、ちょっと厳しい言い方になるかも
しれませんが、といわれる。その言葉が、ほんとうに気遣いに満ちた片田教授の
人柄を思わせて、感動を倍加させる。

津波てんでんこ、という言葉についても。
三陸は、歴史上、繰り返し、津波の被害を受けてきた。津波てんでんこというのは
津波がきたら、人のことなんか構わずに、てんでバラバラに逃げなさいと。この
言葉も、考えようによっては薄情な言葉に聞こえるけど、でも、そうじゃない気が
する、と片田教授。

絆というと美しいけど、絆によって一家が全滅してしまったという悲しい事実がある。
それを避けるために、苦渋に満ちた選択として、津波てんでんこ、があると。

もう感動。なんか感動感動って書いてると、バカみたいだけど。
でも感動。

また何度も見返すと思う。片田教授のインタビュー。NHKの録画した番組は
たぶんもう見ないと思うけど。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください